Research On Helminths

蠕虫類の研究

蠕虫のイメージ
What are Helminths?
蠕虫類とは

蠕虫は多細胞生物なので虫体が大きく、「目で見える」病原体で、形態を観察して診断するのが難しくも魅力的です。
吸虫、条虫、線虫の3つのカテゴリーがあり、それぞれに多様な種類が存在し、ほとんどが一生のうちに複数の動物への感染を必要とする複雑な生活環をもつため、正しく診断するためには正確な知識をもつことが重要です。

複雑な生活環をもつ蠕虫類は実験系の構築が難しく、研究が遅れています。新規実験系の創出により、研究開発の突破口となる発見をすることを目指しています。

Research On Helminths In Our Laboratory
当研究室における蠕虫の研究について

産業動物、伴侶動物、野生動物、ときにはヒト症例の蠕虫感染症について診断、形態学および分子学的種同定、疫学調査などに幅広く取り組んでいます。
最も得意とする寄生虫は哺乳類の肝臓に寄生する肝蛭(かんてつ)です。肝蛭は世界中に蔓延する人獣共通感染性の吸虫です。
研究室で継代している実験室株を用いて、培養系・診断系の確立に取り組んでいます。

蠕虫類感染診断のイメージ
蠕虫類の診断、形態学および分子学的種同定、疫学調査

動物医療の現場では様々な蠕虫感染症が問題となります。産業動物、伴侶動物、動物園、ときには人体症例など幅広い臨床現場と連携し、蠕虫感染症の診断・原因種の同定・疫学調査に取り組んでいます。これらの調査研究を通じて、寄生虫感染症の制御に貢献しています。

また、薬剤耐性虫体の出現など、臨床現場の困りごとを解決するための調査研究を進めています。 獣医学部の学生達にとっては、専門知識が要求される寄生虫の診断スキルを身に着けるチャンスです。

蠕虫類培養系のイメージ
吸虫感染症対策のブレークスルー:培養系確立への挑戦

蠕虫類は、試験管内培養できないことが研究開発の障害となっています。 当研究室では肝蛭を実験材料に吸虫の培養系確立に挑戦し、障害を突破することを目指します。

また、培養系の確立を通して吸虫の成熟機構の解明という学術的新発見が期待できます。これは吸虫の成熟を阻害する伝播阻止薬の開発に繋がります。 世界から「顧みられない熱帯病」である吸虫感染症を撲滅することも夢ではないかもしれません。(2023創発的研究支援事業に採択)

抗体検査キットのイメージ
肝蛭症を現場で診断できる抗体検査キットの開発と疫学調査

肝蛭症の畜産業に対する経済被害は世界で年間32億ドル(約4,900億円)と試算されていますが、これは20年以上前の推計で、実際には温暖化に伴い感染率が上昇しているので、より甚大な被害があるとされます。 しかし、正確な診断ツールがないので現状を適切に把握できていません。

当研究室では抗体検査用キットの開発を進めています。当研究室が作製した組換え抗原によるELISAは、優れた診断能を有します。世界中の流行地で疾病コントロールに貢献できると考えています。